医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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高額医療費のカルテ
治しの医療と癒しの医療
高齢社会、患者の求める医療とは
治しの医療と癒しの医療
 
 医療は〈治しの医療〉と〈癒しの医療〉があるのではないかと考える。

 近代西洋医学のこの100年の進歩はめざましい。
外科手術の進歩、感染症の制圧、その輝かしい成果に幻惑されて人々は〈癒しの医療〉を忘れてしまったのではないだろうか。
ました加齢からくる衰えをテクノロジー志向の〈治しの医療〉で対応しようと言うのは大きな間違いであり、思いあがりである。
 
 老人医療費が高騰している。
このまま上昇していくと、老人医療費は10年後に2.2倍、15年後には3.4倍に膨張する。問題は老人医療費の伸び率が、老人の増加率を大幅に上回っていることである。

 ここで医療経済について論じるつもりも資格も、私にはないが、加齢が原因の病いや障害を、〈治しの医療〉で対処しようといる過ちがあるような気がしてならない。  

 がんという病いがある。日本人の3分1はがんで亡くなる。
日本人は一年にどのくらいの人数が死亡しているのだろうか。  

 1960年代から1980年代は、年間の死亡者は70万人台だった。
しかし1990年代に入り、後期高齢者が急増し、1990年代に80万人台を超え、現在は100万人を突破している。2012年には140万人になるという予測もある。
年間140万人死亡するという「大量死時代」になり、その3分の1が、がん死するとなると、50万人近くの人たちが、がんで亡くなることになる。

 がんは基本的に高齢者に多い病気である。
がんを早期に発見して、他の臓器に転移する以前に外科的に摘出すれば完治することは多い。しかし、がんの多くは早期の段階では無症状のことが多いから、すべての人が早期発見されることは難しい。
現在も1年に30万人近くの人が、がんでいのちを奪われているのである。  がんの手術は〈治しの医療〉と言っていいだろう。

 しかし、治しの医療の対象にならないがん患者は〈癒しの医療〉こそが重要なのである。  
私の尊敬する九州大学大学院・医療システム学教室の信友浩一教授は、がんを手術するような医師を「問題解決型医師」といい、人生の節目節目で患者の相談相手になれる医師を「問題対応型医師」だという。

前者はテクノロジーが優先する。後者は心に重心がおかれるように思う。
「問題対応型医師」とわたしのいう「癒しの医療」は、ほとんど共通するといっていいだろう。

 がんのターミナル期、死を看取る医療、典型的な問題対応型医療でなくてはならない。
〈癒しの医療〉こそがターミナル期の患者を癒すことができるのである。

 現在ですら一年に100万人の人が死亡する。そのほとんどが高齢者である。がんで亡くなる人も含めて、死を見取る医療は〈癒しの医療〉であるべきなのである。しかし、癒しの医療をになう医師はあまりに少ない。

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