|
|
 |
| 「看護婦」から「看護師」へ |
| |
今春から看護婦・看護士の名称が「看護師」になったことはご存知だろう。では助産婦は、というと、答えられない人も多いかもしれない。答えは、「助産師」である。保健婦は「保健師」。これら看護職に関する法律「保健婦助産婦看護婦法」も当然のことながら「保健師助産師看護師法」に改正された。
改正の理由は「女性と男性とで名称が異なっている現状を改める必要がある」というもの。日本看護協会の念願であった。
かつては看護婦といえば、文字どうり女性の職業だった。しかし最近は男性も看護職に就く人も増えてきた。男性がこの分野に進出したのは、最初のころは主に精神病棟だった。患者の中には暴力をふるうものもいたりして、男性のほうが都合のいい面もあったようだ。
男性が、看護婦では不都合というので、男性は看護士と呼ばれるようになった。今でも圧倒的に女性が多いとはいえ、男性の進出も目覚しいこともあって「看護師」と名称を改めたのは妥当だと思う。
筆者は、1970年代にアメリカの医療事情を取材したことがあるが、多くの男性がナースとして働いていたし、救急隊員も女性が進出していてびっくりしたものだった。日本と違って救急隊員は腰に拳銃を携帯しているのでなおさら驚いた。救急車に同乗させてもらって取材したのだが、「救急患者発生!」という事態になると、若い女性救急隊員が救急車のステアリング・ホィールを操ってフルスピードで現場に直行。男性顔負けの頼もしさだった。彼女は、休憩時にミスタードーナッツ≠ノ案内してくれて、ドーナッツを食べているところは、なかなか魅力的で可愛い女の子でしたが…。そのころアメリカは職業に男女の垣根が取り払われつつあったように思う。
今回の看護師への改正は、女性と男性とで名称が異なっているのを正すということもさることながら、婦≠ゥら師≠ヨの変更はもうひとつの意味があったかも知れない。
「婦」は、嫁いでいる女、子の妻という意味。「師」は、特定の技能を身につけている人を表わす語、と辞書にはある。看護師はスペシャリストしての職能を表わしているということになる。現在の助産師が、かつては「産婆」であったことを思えば職能にふさわしい名称に改めるのは、必要なことであろう。
法律で名称を変えても多くの市民に定着するには時間がかかる。看護婦という言葉には長い歳月をかけた歴史がある。コンピューターで瞬時に書き直すようなわけにはいかない。
余談になるが、同じ看護学校を卒業した看護師が、夫の保険金目当てに夫殺しをしたというニュースを報ずるレポーターたちやアナウンサーが、改正後も「看護婦」と放送していた。
これまで看護婦時代の管理職は、「総婦長」「婦長」というのが普通だった。ところが、この名称は使えない。そこで、これからはどんな名称にするか。目下検討中のようである。「師長」「看護師長」「看護科長」「ナースマネジャー」「チーフナース」……となかなかにぎやかである。「師長」なんていうと、師団長みたいだし、あるいは発音は市長と同じだし、誰にもわかる普通名詞≠ニして人びとに親しまれるような名称が定着するのにはまだ時間がかかりそうだ。
日本看護協会は最近「看護職員実態調査」を発表。〈仕事に対する考え方〉として「結婚・出産・介護等にかかわらず、何らかのかたちで働き続ける」と回答した比率が64.8%。この数字はなかなか頼もしいと思う。超高齢化社会の医療・福祉を担う中核は看護職である。
男の子も女の子も「将来なりたい職業」という問いに「看護師」と答えるような真の師≠ノなってほしいものだ。
|
|
|
 |