医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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医療事故防止と安全文化
医療事故防止と安全文化
 
  
 新聞、テレビなどメディアが医療事故を報じない日はないほど、相変わらず医療事故が頻発している。昔とは違ったタイプの医療事故が多発している。

 最近は内視鏡による手術が多く行われるようになった。開腹して直接患部を見ながら、手で触りながら手術をするのではなく、ブラウン管を見ながら、いわば手探り≠ナ手術をする。多くの症例の経験と高い技量が求められる。経験の少ない医師が強行すると大事に至る。東京慈恵医科大学青戸病院に事故はその典型例だ。前立腺の内視鏡手術を行って患者を死に至らしめた。アメリカでは、移植手術が日常的に行われ、移植の部位を間違ったり、左右の臓器を取り違えたりする事故も多く発生している。

 10月16日(土)に「医療安全管理研究セミナー」が開かれた。埼玉県和光市にある国立保健医療科学院の会議室で行われた。同院の政策科学部の長谷川敏彦部長の主宰する研究会。 医療現場で働く看護師、薬剤師、医師それに研究者ら11名が、医療安全管理、すなわち医療事故を起こさないための実践活動、研究を発表した。

 質の高い実践・研究発表は感銘を与えたことはもとより、発表者と参加者との間で交わされる質疑応答、コメント、ディスカッションの熱気には圧倒される思いだった。午後一時から七時にいたるまで、六時間にわたるの勢いはとどまることはなかった。医療における安全文化が徐々にではあるが、成熟しつつあることが伝わってきた。

  アメリカの事例研究も参考になった。手術の事故を防ぐためのノウ・ハウも進化してきているようだ。

  手術当日、ステップ1として患者のフルネーム、手術部位、手術の内容、手術をしなくてはならない理由を、患者自身に確かめる。ステップ2は、手術する部位の左右を間違えないために、右側の部位ならば、右手の指に主治医が書き込みをする。 ステップ3として 手術室に入る前、患者にフルネーム、誕生日、手術の部位などを確かめる。ステップ4は、手術室に入って、手術をする直前に「タイム!」(スポーツで一時中止するように)をかける。手術スタッフが患者を正確に確認、部位などを綿密に確かめる。最後のステップ5では、レントゲン写真、CTの映像などを複数の手術スタッフが見て、手術部位などをチェックする。ダブルチェックならぬ、五重のチェックである。

  もうひとつアメリカの状況で興味深かったのは、患者側がクレームをつけたり、訴えてから医療側が対応するのではなくて患者が気づかないようなケースでも、医療過誤があったことを医療側が真実を告白することを義務づけられるようになったという。アメリカは、一般的に訴訟社会であり、相手を非難する「非難文化」だと、いわれる。こうした「非難文化」が、薄まりつつあるということが「安全文化」が、成熟しつつある証左だとするならば、喜ばしいことである。

  安全文化を育てていくことは単に医療側だけの責任なのだろうか。アメリカの手術のときの五重のチェックのことを先述したが、患者側も、医療者には絶えずフルネームを名乗ることを習慣づけることなど、患者の側もやることは多いと思う。文化とはみんなで育むものである。

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