医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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2004年
脳卒中研究会で診療レベルを上げる
ジェネリックという医薬品
障害者に優しいスイスの観光都市
スイスの製薬業界事情
「患者様」と呼ぶだけでいいのか…?
変わる医師の臨床研修制度
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ステロイド裁判の不幸な判決
医療事故防止と安全文化
脳卒中研究会で診療レベルを上げる
 
 ギリシャ五輪の野球監督・長嶋茂雄氏が脳卒中で倒れたと、いう報は衝撃だった。国民的ヒーローでもあり、元気≠絵に描いたようなお人だっただけに「まさか」という想いは強かった。
 長島氏の病名は「心原性脳塞栓症」。脳梗塞のタイプのひとつだ。心房細動(脈の打ち方不規則、脈の大きさもまちまちで絶対性不整脈ともいう)が原因で心臓から血栓が流れてきて脳血管を突然閉塞する。このタイプの脳梗塞は、脳血管に狭窄がなかった人に、しかも比較的太い血管を血栓が突然塞いで、広範囲の脳細胞にダメージを与える。死亡率も高い。死に至らなくても意識が戻らなかったり、寝たきりになるケースが多い。 新聞報道などによると、長島氏は、順調に回復に向かっている、というから医療スタッフの努力、本人のリハビリへの懸命な取り組みが、功を奏しているのだろう。ギリシャ五輪で長島氏の勇姿を見ることはできないかもしれないが、一日も早い回復を祈りたい。

 この夏、神奈川県大磯で脳卒中の勉強会が開かれた。『脳卒中治療研究会 大磯セミナー2004』である。鎌倉市にある湘南鎌倉総合病院脳卒中診療科の森貴久医師が呼びかけ人になって始められた。今回で五回を数える。五年まえ、勉強会をやりませんか、と呼びかけたときは、湘南地方の脳卒中診療のレベルは決して高いとは言いがたかった。しかし勉強会の成果は徐々に出てきて、湘南のレベルはかなり上がってきたという評価が定着してきた。

 この勉強会のもうひとつの特色は、医師中心ではなく、看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、それに医療機器メーカーのエンジニア、製薬会社のMR(医療情報担当者)らも多く参加していることだ。「脳卒中は、医師だけの診療レベルがが高くても成果は上がりません。医療専門職全体のレベルアップを図り、製薬や医療機器メーカーからの最新情報を吸収して、初めて脳卒中診療のレベルが上がっていくのです。そして専門職がそれぞれの枠組みの中で閉じこもっていては駄目なんです。急性期から、回復期リハビリテーション……という全体のストーリーを理解したうえでそれぞれの専門性を発揮することが大切なんです」と森貴久医師は話す。今回は一三〇人余が参加、各職種から多くの研究発表が行われた。

 湘南鎌倉総合病院脳卒中診療科は、脳梗塞で詰まった血管をカテーテルによってプラチナ製のステントを挿入して血管の開通させるという治療(経皮的血管形成術)で大きな成果をあげている。外科手術によらないで血流を回復させる手法だ。森医師グループは、この領域ではフロントランナーの位置にある。今回のトピックスのひとつは森グループの泉本一医師の『脳塞栓の血栓回収』という研究発表。先述した長嶋茂雄氏の心原性脳塞栓症のような比較的大きい血栓をカテーテルに特殊な器具を通して血栓を捕捉して引きずり出して回収する。まだ症例は多くないが、劇的に回復するケースがある。ビンの口のコルク栓を引き抜くような要領だ。

 脳卒中は怖い病気である。ある日突然襲い、死を免れても、半身不随、言語障害など重篤な障害を遺す。ローカルな勉強会の地道な活動が怖い脳卒中≠フ全国の診療レベルを押し上げていくのは頼もしい。

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