医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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2004年
脳卒中研究会で診療レベルを上げる
ジェネリックという医薬品
障害者に優しいスイスの観光都市
スイスの製薬業界事情
「患者様」と呼ぶだけでいいのか…?
変わる医師の臨床研修制度
新時代を迎えた心臓病治療
今年こそ「患者中心の医療」を
韓国の病院事情を見て
ステロイド裁判の不幸な判決
医療事故防止と安全文化
障害者に優しいスイスの観光都市
 
 スイスは26のカントン(州)からなる連邦国家である。各カントンは、それぞれ独自の憲法と法律をもち、かなり大幅な自治権と自由が認められている。連邦政府がになうのは外交、国防、財政、運輸くらいである。したがって、鉄道は国有鉄道である。最新技術と優雅さあふれた列車が走っている。何度か鉄道を利用したが、日本にはないシステムがあって楽しい。唇に人差し指(沈黙)のマークがついた車両がある。「この車両は静寂を守り、お話も慎みましょう!」ということなのだ。もちろん携帯電話も厳禁である。しかし、全車両がそうではない。「お喋り大いに結構」という車両もあり、「煙草も大いに吸ってください」という車両も用意されている。これぞスイス型の民主主義というべきか、と感心した。

 さてチューリッヒ中央駅から列車に乗って南へ48分、ルツェルンに着く。中世の面影を色濃く残す魅力的な古都である。ロイス川にに架かる木製の屋根付の橋、カペル橋はこの街のシンボルである。川面には大白鳥が優雅に泳いでいる。この小さな街に訪れる観光客の数は世界第六位。ロンドンを訪れる客より多いというから驚く。観光のハイライトは、ピラトゥス山である。標高は2,132メートル。魔の山≠ニ異名をとる、この山は太古から神秘的な伝説や神話に包まれている。イエス・キリストを処刑した古代ローマの司令官ポンティウス・ピラトゥスの死体が中腹の沼に投げ込まれたという伝説がある。太古からドラゴンや妖精が棲むと、人びとは信じていた。

 1859年、大作曲家リヒャルト・ワーグナーが山頂に登り、パノラミックな景観に魅了されたという。以来、世界中から年間数百万人の観光客が訪れるようになった。私も世界一急勾配のロープウェイで山頂に案内してもらったが、万年雪をいただいているアルプスの峰峰も遠望できる神々しい景観には息をのむ思いであった。

 ルツェルンの街の魅力とピラトゥス山の魅力を語ったが、もうひとつ書いておきたいことがある。私が投宿したのは、ルツェルン駅から程近いコンティネンタル・パーク・ホテル。古都の建物は表から見ればいかにも古めかしい。このホテルも例外ではない。しかし建物の中に入ると、たえず改修を繰り返していることがよく分かる。ホテルの女主人、ミセス・ぺドラチェッティが、「今回の改修で最も心を砕いたのは、障害のある人のためのお部屋でした」と言う。鍵をお借りして、その部屋を見せてもらった。私自身、障害のある人と、パリや北欧のホテルを訪れたことがある。一流と言われるホテルには必ずと言っていいほど障害者のための部屋が用意されていた。バスやトイレに工夫が施されている。しかしスイスのホテルはそれ以上に素晴らしかった。車椅子の高さに合わせた洗面台、座ったまま使えるシャワー、角度を変えて見やすくする鏡、化粧水のビンなどを逆さ置いて手が不自由でも使用できる装置など、以前私が見たものよりははるかに優れたものだった。表から見ると古色蒼然としているが、一歩中に入ると、斬新な装置と心づくしが見られる 伝統や歴史に安住しない観光都市の心意気のようなものを感じたのである。

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