格差社会≠ェますます進行していることは明らかである。上流と下流に二極化社会になりつつある。
「先進国の中で日本はアメリカに次い2番目に低所得者が多い」とOECD(経済協力開発機構)から警告を発せられた。生活保護世帯も100世帯を超えた。最近はワーキング・プアなど、新しい貧困層が確実に増大している。こうした現実を見せつけられても、格差社会≠認めたがらない人がいる。あるいは格差≠煦ォくないではないか、と言う人すらある。しかしどんなに強弁しようとも、不平等や格差は好ましいものではない。
以前このコラムで健康格差について書いたことがある。またまた格差を取り上げる気になったのは、テレビ界の「格差社会」を書いておきたかったからである。最近、関西テレビの『発掘!あるある大事典U』という番組で、納豆を食べるとダイエット効果があるという内容を放送したが、それが捏造だったことが発覚した。関西テレビは、記者会見を開き、捏造があったことを認め、番組も廃止することになった。
この番組が放送されると、スーパーマーケットの納豆は、売り切れ、生産が追いつかない状態になったという。納豆がダイエットになるというエビデンスはないのにもかかわらず、捏造したというのだ。
テレビ、新聞をはじめ、メディアはこのスキャンダルを大々的に報じているが、総じて、放送人のモラル、すなわち倫理の問題として扱っているように思われる。確かに放送人の職業倫理の問題には違いないのだが、もっと深い構造的な問題があると思う。
民放の番組はテレビ局が直接制作するケースは少ない。まずキー局の関連会社の制作会社に下請けされる。制作会社はさらに孫請け制作会社に丸投げされる。このあたりの事情を『週刊ポスト』は詳細に取材している。スポンサーはスポンサー料として例えば5000万円テレビ局に支払う。テレビ局は番組宣伝費、電波料、20パーセントのマージンを差し引いて、制作費として2500万円制作会社に支払う。制作会社が、孫請けに支払うのは500万〜800万円。制作費は、孫請けプロダクションにいくときは10分の1に痩せ衰えているという構造だ。制作費が安いというだけではなく、「面白い番組」つまり視聴率が稼げないと、仕事を切られてしまう。そこに捏造ややらせ≠ェ生まれる温床になる。 キー局のプロデューサーが、「納豆はダイエットに効果がある」という番組を作れというと、孫請けプロダクションの担当者は、捏造をしてしまうという構造があるのだ。今回のケースは、イギリスの医学者や栄養学者を起用したようだが、彼らが日本のテレビ番組を見ないことをいいことに、彼らのコメントを、都合のいいように改ざんしたようだ。
私自身のささやかな経験を紹介しよう。「医療費はなぜ年々上がるのか」というテーマで番組を作りたいという。私のところに相談に来る。「医療費が膨張する最も大きな要因は、人口が高齢化して老人医療費が増えるからです」と説明しても、「それは当たり前すぎて面白くない」と言う。「不正請求する悪徳医師が多いから医療費がはね上がる」というふうな番組にしたいというのである。どうやらテレビ局のプロデュサーがそう言うらしい。彼らの無知を嗤うのは簡単である。そういう構造がテレビ番組を歪めている実態は嗤えない。士農工商という封建時代の階層がある。下請けプロダクションの存在は士農工商のさらに下流なのである。
キー局の年間平均給与は、1500万円くらい、制作会社の平均給与は300万円台という。これを格差≠ニ言わなくてなんと言おうか。制作局の社員はまだいい。契約社員、フリーと言う名のカメラマンやライトマン(照明)は、時給で換算すると500円くらいの低賃金に甘んじている。
テレビ局のプロデューサーが、下請けプロダクションのスタッフを叱咤している光景、女性リポーター(この人たちも身分不安定なフリー)に肩をもませている光景を垣間見ることがあるが、うら悲しい。
私自身、テレビの世界で育ててもらったゆえに、今のテレビ界の二極化社会はひどく残念である。 |