医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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エッセイ月刊「新医療」掲載分>医師アシスタントの養成を考えよう

医師アシスタントの養成を考えよう

 
 

 「日本の外科医がいなくなる」という言い方をすると、いささかセンセーショナルな物言いになるかもしれない。しかし日本外科学会総会の会員数と新入会員数の推移を見ていると、あながち大げさな表現でもないことが納得させられる。会員数のほうは、1996年をピークに右肩下がり。一方新入会員数のほうは、1994年が、3000人近いのに較べて、最近は500人を割る年もある。

 このほど、東京都内で日本胸部外科学会(田橋晄一理事長)の「わが国の医療供給体制改善に向けて」というテーマで記者会見が行われた。

 同学会が国会に提出した「提言書」によると、「新医師臨床研修制度が施行されて地方の大学病院に若い医師が集まるシステムが一時的にせよ崩壊し、一挙に増やされた研修病院がその指導の立場を負うことになると共に、医師確保の面では若手医師の売り手市場にもなり、労働条件が良くリスクの少ない分野へ多くの医師が集中しています。これは患者さんの立場に立てば歓迎されるところではないとないと考えます」(提言書から)

 たしかに産科、小児科、麻酔医、救急の医師不足は深刻である。当直明けの勤務は日常化しており、過酷な勤務がつづいている。外科系の医師の当直勤務内容は、「労働基準法に準じているか?」といえば、74%の医師が、規定とかけ離れた重労働を強いられている。(外科関連協議会アンケート、2007年から)

 外科系では術前準備、手術、術後管理など全般にわたり若い外科医が過度に働かなければ、手術がこなせない状況にあるという。医師でなくてもできる仕事もも多い。そこで同学会は、改善策としていろいろな提案をしているが、そのひとつとしてphysician assistant(PA)を養成して、医師以外の担当する部分を拡大してそれぞれの専門職のキャリアアップを行うことができるような制度の改革が必要である、と主張している。欧米のように看護師などが、上級の教育を受け、手術や麻酔に関与できるようにする制度を提案しているのだ。学会がこのような提言をすることは、注目すべきことだと思う。

 具体的にはアメリカのナース・プラクティショナー(以下NPと略)などを想定しているように思われる。アメリカでは、1960年代から養成が始まったといわれている。現在のNPは、看護師(RN・registered nurce)の資格を持ち、修士課程で、上級の教育と訓練を受けた人が認定試験を受け、合格者に資格を与えられる。健康管理・相談・健康教育・助言など行っており、限定的であるが、薬の処方、検査の指示を出す権限も与えられている。
 
 私は、『新医療』誌で、聖路加国際病院の日野原重明理事長と対談させていただいたことがあるが、アメリカでは、専門的な教育と訓練を受けた看護師が、麻酔にたずさわっていることを教えてもらった。「日本では、麻酔学会が反対しているので出来ないが、訓練、教育を受けた専門看護師ができるような制度に変えなくてはならない」と、熱っぽく語られていたことを思い出す。

 アメリカでもNPが登場した当初は、医師の間から根強い反対があったと聞くが、現在では、アメリカの医療界にしっかりと根付いている。日本胸部外科学会が、physician assistant(PA)を提言したことは、医師の側からだけに画期的である。麻酔医にしても、胸部外科医にしても、専門性を極めた人たちのできることが、すべて専門看護師に代替できるものではない。

 手術現場で専門医だけにしか出来ないことに専念できるシステムを創ることが大切であると思う。日本人は、医療に限らず分業≠キることに得意ではないように思う。若手医師に、医師でなくてもできる雑用≠押し付けてきたことも若手医師の大学離れを促進した原因のひとつであることも否めない。厚生労働省も、NPを実現するために、医師法、保助看法を改正することを、真剣に考えてもらいたい。


 
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