医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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メディアにはびこる「二分法思考」
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【part[】メディアにはびこる「二分法思考」
 

西洋医学は部分を見ることに関しては他の追従を許さない立派な医学であることは誰しも認めるところである。中国医学は全体を見る医学であるといわれる。それでは「部分を見る医学と、全体を見る医学と併せていかなくてはならない」という発想が出てきて当然だろう。しかし、人は「併せていく」が得意ではないようだ。「AかBか」というふうに、二者択一の思考法をとることが多い。「西洋医学か、さもなくば中国医学」というふうにである。

私は、そのような二者択一の考え方を「orの思考法」と呼んでいる。西洋医学or
(さもなくば)中国医学ではなく、西洋医学and(そして)中国医学というふうに、良いところを併せていくのが「andの思考法」である。わたしの言う「orの思考法」は、二分法ともいう。

『メディア危機』(金子勝 アンドリュー・デウィット著 NHKブックス)という本が最近出た。米国ブッシュ政権と小泉首相の二分法の危険性を訴えている。分かりやすいがゆえに、世論操作がしやすいというわけだ。ブッシュの典型的な例は、2001年9月20日の議会で行われた演説の中の「全ての地域の全ての国家は今、決意を固めなくてはならない。われわれの側につくか、テロリストをとるかだ」だろう。小泉首相の二分法といえば「構造改革」対「抵抗勢力」であろうか。
 
ブッシュ大統領のスピーチライターは、テレビの映像効果を計算して、演説の一文に10語以上の単語を使わないという。小泉首相は「ワンフレーズ政治」だ。正規の記者会見ではなくて、首相の行動を一日中追いかける、いわゆる番記者≠ノ囲まれて話す首相の言葉は、まさにワンフレーズだ。記者たちは、ほとんど反論の口をさしはさむことはない。 

こうした二分法、ワンフレーズ政治が、人々を思考停止に陥れ、スローガン政治を増幅させるという悪循環を生む。幼児と一緒にテレビを見ていると、登場人物をさして「この人善い人、悪い人?」と聞く。あまりにも分かりやすい「二分法」に慣れてくると、幼児並みの幼稚な思考になってくるかもしれない。 

有名タレントの司会するディスカッション番組がある。ディスカッション番組といえば聞こえはいいが、怒鳴りあいを見せる番組である。例えば、郵政関連民営化法案をめぐる番組をみる。テレビによく出る若手政治家、毒舌で鳴る元衆議院議員、有名な政治評論家などが出演している。郵政の民営化の是非をめぐって議論するのではない。賛成派と反対派が怒鳴りあうのである。これも二分法ですね。高名な政治評論家が「馬鹿野郎!」と怒鳴っている。若手政治家がえへらえへらと笑っている。

この番組はわたしも出演したことがあるのでよく分かるのだが、一時間の番組だが、実際には三時間ぐらいビデオに収録している。それを怒号行きかう感じに編集するのだ。視聴者はエライはずの政治家や評論家が、がなりあうのを楽しむという趣向なのである。
 
医療事故を取り上げるとする。事故を起こした医師は悪徳非道な医師として描かれる。メディアには悪徳医か名医しか登場しないらしい。ここにも単純な二分法だ。医療事故は病院という組織の失敗なのである、という視点、医療事故の再発を防ぐにはどうすればいいのか、そんな知的レベルの話にはならないようだ。
 
先に紹介した書名のように、メディア危機≠ネのだ。この書も主張するのだが、市民の側が、メディア・リテラシーを身につけていかなくてはならない。リテラシーとは、いうまでもないが、読み書きの能力のことだ。メディア・リテラシーとは、メディアに対して、絶えず批判的に接し、メデァのメッセージを正確に読み取る能力のことである。
 
テレビに加えて、携帯電話、インターネットの普及はめざましい。携帯電話の契約も八千万件をゆうに超えている。これら新しいメディアを含めて大人もさることながら、とりわけ子供、若者たちのメディア・リテラシーを真剣に考えていかなくてはならない。


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