医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考えるコンシューマーヘルス
 
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【partT】
医師はお金持ちであるという神話
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医療とは極めてローカルなもの
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アウシュビッツといまどきの常識
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健康志向大国<jッポンは今・・・
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当世名医≠フ作られ方
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メディアは医学情報を正しく伝えているか
【part[】
メディアにはびこる「二分法思考」
【part\】
テレビの劇場化現象を愁う
【part]】
医療事故とマスメディア
【partT】医師はお金持ちであるという神話
 

  朝日新聞に「医者はもうかるって本当?」という記事が出たことがある。結構反響があったらしい。その記事自体は、興味本位ではなく、公正に論じられていたと思う。その記事によると、医師が一年間に使えるお金は、開業医1,630万円、勤務医940万円。会社員の平均400万円、自営業者280万円と比べるとたしかに高収入である。医師の収入を会社員や自営業者と比較するのが適正であるか、はひとまずおくとして、大阪府保険医協会が調査したところによると、勤務医の半数が、週50時間以上働き、70時間以上という医師が二割を超えていたという。これは大変な重労働だ。70時間といえば、一日10時間以上働いている計算になる。
 
日本医学ジャーナリスト協会のメーリングリストにも多くの医師たちの反響が寄せられた。ひとつの例を紹介させていただく。
 
公的病院の管理職医師が、医療改革を話し合うテレビ番組に出演した。他の出演者から「医師の給与は高い」という意見が繰り返しだされたという。その医師は、ご自分の給与をを正直に明かしたそうだ。「意外に高くない」「それは安い」と驚かれたようだ。
 
私の知っている勤務医たちの働きぶりにはいつも頭の下がる思いだ。午前中、夥しい外来患者をこなし、午後は手術と休む暇もない。あまりの重労働で過労死した小児科医のケースもある。
 
先述した医師は慨嘆するのである。
 
「医師になるまでの学歴や修練期間を考えれば、開業医の場合でしたら、せめて自営業者ではなく、中小企業の社長、勤務医でしたら弁護士、大手メディア等の職種と比較して医師の給与を検証する必要があるのではないでしょうか」
 
まったくその通りだと思う。大手出版社やテレビ局に働く年若い社員が、年収一千万円を超えているのは、珍しいことではない。
 
医師はお金持ちという神話はどうして生まれたのだろうか。これはマスメディアの影響が大きいと思う。医師と患者はお互いに尊敬しあう関係、ミューチュアル・レスペクトでなくてはならない。ところが、医療事故が起きた場合などが典型的であるが、医師と患者の関係は、敵対関係のようにメディアは報道することが多い。市民たちの医師への不信感が増幅される。
 
毎年、長者番付が発表される。地方では長者番付に病院を経営する医師が顔を出すことがある。不信感に嫉妬心が加味されることになりかねない。始末におえないのは、市民がそう信じているというよりは、テレビ番組の制作者や週刊誌の編集者などにステレオタイプとして刷り込まれていることだ。
 
私のところにも、テレビ局、週刊誌などから電話がかかってくることがある。真摯に話を聞いてくれる人も多いが、なかには予め、シナリオを描き、それにぴたりはまるコメントを聞きだそうとする人もいる。延々としゃべっても、都合のいいコメントが短く載るのである。前後の文脈を無視して、都合のいい言葉の断片だけを切り取れば、当方の意見とおよそ逆のコメントになっていることもまれではない。

「医者はもうかる」という神話もメディアの人たちの思い込みから来ることが多い。間違った常識≠ニいうものだ。

メディアの人にこんな質問をしてみることがある。「国民医療費は三十兆円を超えています。そのなかで手術の費用はどのくらいでしょうか?」と。「三兆円か五兆円くらいですか」というのはいいほうでまるで見当がつかないらしい。
「一兆円にも満たないんですよ」というと、「へーっ!」と驚く。
 
脳の手術、心臓の手術、頭頚部の顕微鏡下の手術などなど、厳しい修練と経験が要求される。手術ひとつ見ても国民医療費のなかで、三lにも評価されていないのである。こうした事実を国民はもっと正確に知るべきだろう。その前にメデァにたずさわる者は勉強すべきである。 「医者はもうかる」というのは決して本当ではないのである。


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